原始の湖畔、サファイアの瞳
 ――雨の日。 灰色の空から降り注ぐ冷気が、世界を閉ざしていた。

  二人は、少年が用意しておいた枯れ草を敷き詰めた洞穴の奥で、静かに身を寄せ合っている。

(暖かい……)

 肌を伝わってくる、彼女の柔らかな体温。

 群れを離れ、凍てつく土の上で一人丸まって眠るのが当たり前だった少年には、この温もりが信じられないほどに尊かった。

 少年は、隣に座る彼女の横顔をじっと見つめる。
 彼女の静かな瞳の奥に、自分と同じ「孤独」の影を見たような気がした。

 外を叩く雨音さえ、今は二人を外界から守る子守唄のように響く。
 槍を握りしめる必要のない、初めて知る『安らぎ』。

 別の獣なら、少年を警戒し、近づこうとはしないはずなのに、彼女はなぜここまで安心しきり、そばに寄り添うのだろう? 

 少年もまた、どうして自分は、彼女のような清らかな姿に生まれなかったのだろう。
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