御曹司はただの同期のはずだったのに
タクシーを降りた直後、私のスマホが震える。
同僚からのメッセージ。

「今、営業チームで軽く飲んでる。来ない?」

(……このタイミングで)

少し迷ったけれど、そのまま帰る気にもなれない。

「どうした」

理人が隣で聞く。

「営業のメンバーが飲んでるみたい。顔出してくる」

「俺も行く」

即答だった。

「別に来なくてもいいでしょ」

「同期だろ」

その一言で、なぜか断れなかった。

店に入ると、すでに何人かの同僚ができあがっていた。

「お、桐谷!遅かったじゃん!」

「東條も一緒かよ、珍しいな」

軽口が飛び交う中、私は空いている席に腰を下ろす。

その向かいに、当然のように理人が座った。

(……なんで、自然にそこなのよ)

気にするのも馬鹿らしくて、私はグラスを手に取る。

「お疲れ様です」

「かんぱーい!」
< 10 / 150 >

この作品をシェア

pagetop