御曹司はただの同期のはずだったのに
思わず、言葉がこぼれた。

「愛してる、理人……」

その瞬間。

理人の動きが、ぴたりと止まる。

「……今、それを言うか」

少しだけ、困ったような声。

でも、その目は逸らさない。

「思った時に口に出さないと」

そう返すと、理人は小さく息を吐いた。

「……俺、もう限界なんだけど」

至近距離で見つめてくる。

逃げ場なんてない。

「玲奈」

名前を呼ばれる。

その声が、少しだけ揺れていた。

「俺、この気持ちが“愛”とか、まだ分からない」

一瞬、息が止まる。

「でも」

言葉を選ぶように、続ける。

「玲奈を……俺の中で、一人占めしたい」

その言葉は、不器用で。

でも、嘘がなくて。

胸の奥に、強く響く。

理人の表情が、少しだけ崩れる。

泣きそうな顔。初めて見る顔。

(……この人)
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