御曹司はただの同期のはずだったのに
逃げ場を与えない。

「……帰って」

繰り返す。それしか言えない。

「玲奈」

少し間を置いて、続けられる。

「俺を嫌いになったか」

その一言で、すべてが崩れた。

(……違う)

違う。そんなわけない。

体から力が抜けて、そのまま玄関に崩れ落ちる。

涙が、勝手に溢れてくる。

嫌いになんて、なれるわけない。

こんなにも好きなのに。

「玲奈!」

強く呼ばれる声。

次の瞬間、金属の音がして――チェーンが外れた。

ドアが開く。

理人が、息を切らして立っていた。

そのまま、迷わず中に入ってくる。

「……まだ俺のこと、好きなんだろ」

逃げ場のない問い。

私は何も言えず、ただ涙をこぼす。

「理人……」

名前を呼ぶのが、精一杯だった。

理人の表情が歪む。

「だったら」
< 109 / 150 >

この作品をシェア

pagetop