御曹司はただの同期のはずだったのに
そんなことを思ってしまう。

「……理人」

小さく、名前を呼ぶ。

届かないくらいの声で。

「好きだよ……」

そっと、つぶやく。

自分に言い聞かせるみたいに。

その瞬間。理人のまぶたが、わずかに揺れた。

「……ん……」

ゆっくりと、目が開く。

まだ眠気が残ったままの視線が、こちらを捉える。

「……俺もだよ」

かすれた声。

「玲奈……」

ぼんやりしたまま、自然に口にする。

(……そんな)

寝ぼけながら言う言葉じゃない。

なのに。あまりにも、自然で。

あまりにも、まっすぐで。

胸が、ぎゅっと締めつけられる。

もう、それだけでいいと思った。

これ以上、何もいらない。

私はゆっくりと微笑んだ。

「……ありがとう、理人」

その言葉に、理人は少しだけ目を細める。
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