御曹司はただの同期のはずだったのに
何かを言いかけて――また、眠りに落ちた。

私はそのまま、しばらく動けなかった。

隣にいる温もり。触れれば届く距離。

でも。

(……もう十分)

そう思ってしまう自分がいる。

こんなにも、愛された。

こんなにも、求められた。

それだけで――私は、満たされてしまったから。

そっと視線を逸らす。

朝の光が、少しだけ眩しかった。

最近、理人はオフィスでも微笑むようになった。

ふと視線が合うだけで、柔らかく目を細める。

それだけで、胸が温かくなる。

「ねえ、あの二人。付き合ってるのかな」

「東條さんと桐谷さんでしょ?最近、空気違うもんね」

ひそひそとした声が、耳に入る。

「でも東條は見合い結婚するんだろう?」

その一言で、胸の奥が冷える。

(……そう)

現実は、そこにある。

このままじゃ、いけない。
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