御曹司はただの同期のはずだったのに
でも――

(もう、十分)

そっと、距離を取る。

理人が不思議そうに私を見る。

私は、にっこりと笑った。

「理人」

名前を呼ぶ。震えないように。

「もう終わりにしよう」

空気が、止まる。

「……え?」

初めて見る顔。

戸惑いが、そのまま出ている。

胸が痛む。それでも、笑顔を崩さない。

「理人は、この上に立つ人」

ゆっくりと言葉を選ぶ。

「それに相応しい相手がいるよ」

自分で言いながら、胸の奥がきしむ。

あの人の顔が、浮かぶ。

理人の隣にいるべき人。

「……何言ってんの」

理人の声が低くなる。

信じられない、という響き。

でも。

私は目を逸らさない。

逸らしたら、終われなくなる。

「私たち、ただの同期でしょ?」

わざと、軽く言う。

突き放すように。
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