御曹司はただの同期のはずだったのに
「玲奈、入ってくれ」

社長室の前でそう言われた時、胸が強く鳴った。

(……来たんだ)

覚悟はしていたはずなのに、足が少しだけ震える。

それでも、理人の背中を追う。

社長室の扉が開く。

「失礼します」

一歩踏み入れた瞬間、空気の重さに息が詰まる。

デスクの向こうには社長。

そして、その隣に――美百合さんが座っていた。

「……君は確か、営業部の桐谷君」

社長の視線が、まっすぐに私へ向けられる。

「はい。桐谷玲奈です」

声が震えないように、ゆっくりと言う。

「どうして君がここに?」

当然の疑問。

その空気が、さらに緊張を高める。

「その理由は、俺がお話します」

理人が一歩前に出る。

そして、私の隣に立った。

その距離が、すべてを物語る。

一瞬の沈黙。
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