御曹司はただの同期のはずだったのに
社長の視線が、理人へと移る。

理人は迷わなかった。

「この人が」

はっきりとした声。

「俺の結婚相手です」

空気が、凍りついた。

「……何を言っている」

低く、押さえた声。

その中に、怒りが滲んでいる。

「おまえの婚約者は、美百合さんだ」

当然のように言い切る。

でも。理人は一歩も引かなかった。

「いいえ」

静かに、しかしはっきりと。

「俺は玲奈と結婚します」

その言葉が、部屋に落ちる。

逃げ道なんて、どこにもない。

「ふざけるな!」

社長の声が、響いた。

机を叩く音が、空気を震わせる。

「許さないぞ、理人!」

怒りが、あらわになる。

その圧に、思わず息が詰まる。

でも。理人の隣に立つと、不思議と逃げようとは思わなかった。

理人は、まっすぐ前を見ていた。
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