御曹司はただの同期のはずだったのに
「私も、理人さんと結婚したいです」

一瞬、空気が止まる。

「……なに?」

社長の眉が、わずかに動く。

次の瞬間、椅子が大きく鳴った。

社長が立ち上がる。

圧が、一気に強まる。

「理人!」

怒気を含んだ声。

「おまえはこの状況を分かっているのか!」

責めるような視線。逃げ場なんてない。

それでも。理人は一歩も引かなかった。

「俺が決めたんじゃない」

静かに、言い切る。

「この婚約は、俺の意思じゃない」

社長の顔がさらに険しくなる。

それでも理人は続けた。

「俺は」

一瞬だけ、私の方を見る。

その視線に、迷いはなかった。

「自分で妻を選ぶ」

はっきりと。

揺るがない声で。

その一言が、すべてを断ち切る。

社長の怒りも。会社の論理も。用意された未来も。
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