御曹司はただの同期のはずだったのに
全部、正面から否定する言葉。

(……理人)

胸の奥が、強く震える。

ここまで言うなんて。

全部、捨てる覚悟で。

私を選んでくれている。

社長は、しばらく言葉を失っていた。

怒りと、驚きと、信じられないという感情が混ざった顔。

その沈黙が、場の緊張をさらに高める。

それでも。理人は動かなかった。

私の隣で、まっすぐ立ったまま。

その姿が、何よりの答えだった。

「美百合さん、申し訳ない」

社長が、深く頭を下げた。

「息子は、自分が何を言っているのか、分からないようだ」

その言葉に、理人の表情が強張る。

「親父!」

思わず声を荒げる。

けれど。

「構いません」

静かな声が、空気を止めた。

美百合が、ゆっくりと顔を上げる。

その表情は、少しも揺れていない。
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