御曹司はただの同期のはずだったのに
「たった一人の女性と、人生を共にすることだ」

その声は、まっすぐで。

迷いがなかった。

「他に愛する人がいてもいいなんて」

わずかに眉を寄せる。

「それは、愛じゃない」

その言葉が、静かに落ちる。

美百合は、瞬き一つせずに聞いていた。

「ええ」

あっさりと頷く。

「ただの政略結婚ですから」

その一言に、空気が凍る。

何の迷いも、躊躇もない。

当たり前のことを言っているだけ、という態度。

「結婚してから育む愛もあります」

穏やかに、そう続ける。

否定でも、反論でもない。

ただの価値観の提示。

それが逆に、距離を際立たせる。

理人は、はっきりと首を振った。

「俺は」

言葉に力がこもる。

「そんな結婚、したくない」

その一言が、すべてだった。

会社のためでも。
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