御曹司はただの同期のはずだったのに
そのための結婚。

そのための未来。

すべては“正しい選択”として用意されている。

――でも。

理人は、笑った。

「はっ」

乾いた笑い。

「それが政略結婚か」

そのまま、言い切る。

「笑わせるな」

空気が、一瞬で変わる。

理人が、私の肩を引き寄せた。

強く。逃がさないように。

その腕の力に、覚悟が伝わる。

「俺の人生をかけて守る相手は――」

一瞬だけ、間が空く。

でも、その声は揺れなかった。

「玲奈だけだ」

はっきりと。迷いなく。

その一言が、すべてを覆す。

胸が、強く震える。

(……理人)

こんなふうに言ってくれるなんて。

全部を背負って。

全部を捨てる覚悟で。

私を選んでくれている。

理人は続ける。

「玲奈は」

その声が、少しだけ柔らかくなる。
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