御曹司はただの同期のはずだったのに
「俺の為に、身を引こうとまでしてくれた」

胸が締めつけられる。

あの夜のこと。離れようとしたこと。

全部、知っている。

「俺を誰よりも大切にしてくれて」

強く言い切る。

「愛してくれた人だ」

その言葉に、涙が滲む。

もう、隠せない。

「そんな相手を」

理人の腕が、さらに強くなる。

「手放す気はない」

静かに、でも確実に。

その言葉が、部屋に響く。

逃げ道なんて、どこにもない。

会社も。家も。未来も。全部を否定して。

それでも選ぶと、言い切った。

社長は、何も言わなかった。

ただ、理人を見ている。

その視線の奥にあるのは、怒りだけじゃない。

測っている。試している。本気かどうか。覚悟があるかどうか。

それでも。理人は、動かなかった。

私の肩を抱いたまま。
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