御曹司はただの同期のはずだったのに
一歩も引かずに。

(……この人は)

もう、戻らない。

全部を賭けて。

私を選んでくれた。

その事実が、何よりも重く、そして――

何よりも、嬉しかった。

理人は、ゆっくりと美百合に向き直った。

その視線に、迷いはなかった。

「美百合さん」

はっきりと名前を呼ぶ。

「あなたとは、結婚できない」

空気が、止まる。

誰も、すぐには言葉を返せなかった。

それほどまでに、明確な拒絶だった。

「……そうですか」

美百合は、わずかに目を伏せる。

けれど、その表情は大きくは揺れない。

最初から、どこかで分かっていたように。

「婚約は、破棄します」

理人が、続けて言う。

一切の迷いなく。

その一言が、すべてを終わらせる。
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