御曹司はただの同期のはずだったのに
「自分の手で、つかみ取ってみせる」

その視線には、揺るぎない決意があった。

用意された地位も。

保証された未来も。

すべてを手放して。

ゼロからでもいいと、言い切る覚悟。

(……理人)

胸が、強く締めつけられる。

こんなにも。ここまで。

私のために。社長は、しばらく何も言わなかった。

ただ、理人を見ている。

その目は、怒りだけじゃない。

測っている。本気かどうか。覚悟が本物かどうか。

やがて、ゆっくりと口を開く。

「……そこまで言うか」

低く、重い声。

「すべてを捨ててまで、その女を選ぶか」

理人は、迷わず頷いた。

「はい」

その一言が、すべてだった。

社長は、深く息を吐く。

そして、静かに言った。
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