御曹司はただの同期のはずだったのに
こんなに大きなものを、全部捨てて。

本当に、それでいいのか。

理人は、少しも迷わなかった。

「玲奈がいれば、それでいい」

その一言に、すべてが詰まっていた。

肩書きも、地位も、未来も。

全部いらないと、言い切る強さ。

(……この人)

本当に、全部捨てたんだ。

私のために。

その事実が、胸の奥でじんわりと広がる。

言葉が出てこない。

何か言おうとした、その瞬間――

理人に引き寄せられた。

廊下の真ん中で。

そのまま、唇が重なる。

驚く間もないくらい、自然に。

深くて、あたたかい。

今までとは違う。

どこにも遠慮がない。

もう隠す必要がないから。

「……玲奈」

少しだけ離れて、名前を呼ばれる。

息が近い。

視線が絡む。

逃げられない距離。

「俺」
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