御曹司はただの同期のはずだったのに
(……なんで、こんなに意識するのよ)

ただの同期。

それだけのはずなのに。

足を一歩踏み出した瞬間、わずかに体が傾いた。

「あ――」

視界がぐらりと揺れる。

その瞬間、腕を掴まれた。

「危ない」

低い声と同時に、しっかりと体を支えられる。

「……っ」

思わず息を呑む。

「あ、ごめん」

慌てて体を起こそうとするけれど、理人の手はまだ離れない。

「いいんだ」

短く返される。

「でも……」

こんなふうに触れられるの、初めてだ。

仕事中に肩が触れることはあっても、こんなふうに“支えられる”距離は――知らない。

「少しは俺を頼れ」

その一言に、動きが止まる。

理人の手が、私の腕を軽く支えたまま、離れない。

視線が、自然と上がる。

真正面から、目が合った。
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