御曹司はただの同期のはずだったのに
(……近い)

さっきまで感じていた夜の冷たさが、一瞬で消える。

玲奈は何か言おうとして、言葉を見失う。

視線が泳ぐ。

どこを見ればいいのか分からない。

けれど理人は、まったく動じていなかった。

ただ静かに、まっすぐにこちらを見ている。

逃げ場がない。

心臓が、急に速くなる。

ドクン、ドクンと、はっきりと音が響く。

(……なんで、こんなに)

触れているのは腕だけなのに。

それだけなのに、体の奥まで熱が広がっていく。

理人は、そんな私の様子を少しだけ見てから、ふっと力を抜いた。

「……歩けるか」

「あ、うん……大丈夫」

ようやく声を出す。

けれど、完全に平静は戻らない。

手は離れたのに、まだそこに触れている感覚だけが残っている。

「家まで送るから」

さらりとした言葉。

当然のように言われて、反論が浮かばない。
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