御曹司はただの同期のはずだったのに
理人の腕の中で。

私は初めて――

本当の意味で、自由になった気がした。

しばらくしてから、理人の様子がおかしくなった。

「どうしたの?」

何度目かの問いに、理人はわずかに視線を逸らす。

「いや……今度」

言いかけて、言葉を切る。

珍しく、落ち着かない。

「……外に食べに行かないか?」

少しだけぎこちない誘い方。

思わず、くすっと笑ってしまう。

「ああ、うん。いいよ」

そう答えると、理人がぱっと顔を上げた。

「本当?」

必要以上に驚いている。

「……なにそれ」

「いや、断られるかと思って」

「断らないよ」

そう言うと、理人はほっとしたように息を吐いた。

「任せてくれ」

少しだけ誇らしげに言う。

「とびきりの場所、用意するから」

「……うん」
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