御曹司はただの同期のはずだったのに
拒否しなきゃいけない。

ここで線を引かないと、全部崩れる。

――分かってるのに。

体が動かない。

理人は、私の反応を確かめるように少しだけ間を置いてから、続けた。

「玲奈の部屋に通ってる男はいるの?」

その問いに、思考が止まる。

「いないよ、そんな人」

即答だった。

嘘じゃない。そんな存在、作る余裕なんてなかった。

「……そうか」

理人がわずかに目を細める。

そのまま、さらに一歩だけ距離を詰めてくる。

逃げようとすれば逃げられる距離。

でも、足が動かない。

「だったら」

低く落ちる声。

「俺が通ってもいい?」

一瞬、意味が理解できなかった。

いや、分かっているのに、認めたくないだけ。

(……なに、それ)

冗談でも、軽口でもない。

真っ直ぐすぎて、逃げ場がない。

胸の奥が、ざわつく。

断ればいい。それだけなのに。
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