御曹司はただの同期のはずだったのに
「なんだよ、それ」

背後から落ちた声に、肩が震えた。

次の瞬間、腕を引かれる。

「……っ」

気づいた時には、後ろから抱きしめられていた。

理人の腕が、逃げ場を塞ぐように回る。

強引じゃないのに、離れられない。

背中に触れる体温が、じわりと広がる。

「そういうことは、早く言えよ」

耳元で、低く囁かれる。

その声が、近すぎて。

「だって……」

言い訳なんて、浮かばない。

ただ、心臓の音だけがうるさい。

ドクン、ドクンと、体の奥で響いている。

「俺がどれだけ我慢してたか、分かってるのか」

抑えた声。けれど、その奥にある感情が、はっきりと伝わってくる。

(……なに、それ)

そんなこと、知らない。

知らなかったのに。
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