御曹司はただの同期のはずだったのに
すべてが満ちて、溢れて。

そのまま、ゆっくりと力が抜けていく。

気づけば、理人はすぐそばで息を整えていた。

額にかかった髪が少し乱れていて、いつもの余裕のある表情とは違う。

それが、妙に現実味を帯びて見えた。

静かに視線が重なる。

言葉はいらなかった。

ただ見つめ合うだけで、さっきまでとは違う関係になってしまったことが、はっきりと分かる。

もう――戻れない。ただの同期には。

ゆっくりと、意識が浮かび上がる。

柔らかなシーツの感触と、隣から伝わるぬくもり。

――あたたかい。

ぼんやりとしたまま目を開けると、すぐ近くに理人の寝顔があった。

規則正しい呼吸。少し乱れた髪。

いつも会社で見ている表情とは、まるで違う。

(……私)

一気に現実が押し寄せる。

(私、理人に抱かれたんだ)
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