御曹司はただの同期のはずだったのに
「昨夜の事は、忘れて……」

そう言ったのに、声は思ったより弱かった。

ベッドから抜け出し、シャツのボタンを一つずつ留めていく。

まだ体に残る温もりを、振り払うように。

その時、背後から腕が回された。

「……っ」

理人が、迷いなく私を抱きしめる。

「何言ってんの」

低い声が、すぐ近くで響く。

「俺、本気だって言ったじゃん」

「でも……」

言葉が続かない。

理人は、少しだけ私を引き寄せて、顔を覗き込む。

「でもじゃない」

視線が、真っ直ぐすぎて逃げられない。

「今夜も来るから」

その一言に、胸が強く鳴る。

迷いも、冗談もない。

ただの宣言みたいな言い方。

(……本気なんだ)

じわじわと、実感が広がっていく。
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