御曹司はただの同期のはずだったのに
「一緒に夕食作ろう」

少しだけ声のトーンが柔らかくなる。

「あ、そうだ。俺、ハンバーグがいいな」

まるで当たり前みたいに、そんなことを言う。

思わず、小さく笑ってしまった。

「……何それ」

「いいだろ」

どこか無邪気で、子どもみたいな言い方。

さっきまでの静かな圧とは違う、そのギャップに、心が緩む。

私はそっと手を伸ばして、理人のネクタイを手に取った。

「結んでいいの?」

「ああ……玲奈に結ばれたい」

さらりと返されて、指先が止まる。

(……ずるい)

そんなこと、普通に言う?

でも。

拒めない。

ネクタイを整えながら、自然と距離が近づく。

呼吸が触れそうなほどの距離。

気づいた時には、理人の手が私の頬に触れていた。
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