御曹司はただの同期のはずだったのに

② 何度もあなたを求めてしまう

オフィスに足を踏み入れた瞬間、胸がざわついた。

いつもと同じ朝。いつもと同じ景色。

――なのに。

(なんで、こんなに落ち着かないのよ……)

自分のデスクに向かいながら、無意識に視線を巡らせる。

探しているわけじゃない。

でも、気づいてしまう。

少し離れた席で、理人がいつも通り資料に目を通していた。

背筋を伸ばし、無駄のない動き。

昨日の夜とは、まるで別人みたいに見える。

(……普通すぎるでしょ)

あんな夜を過ごしたのに。

何事もなかったみたいに、同じ空間にいる。

それが逆に、胸を締めつけた。

「桐谷」

突然、名前を呼ばれて肩が跳ねる。

「……っ」

顔を上げると、理人がこちらを見ていた。

会社では、いつも通りの呼び方。

名字で、距離のある声。

それだけなのに、さっきまでの動揺がぶり返す。
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