御曹司はただの同期のはずだったのに
会議室の空気は、どこか張りつめていた。

プロジェクトの説明が続く中、私は手元の資料に目を落としたまま、顔を上げない。

(……これでいい)

今回の企画には、あえて手を挙げなかった。

理人と同じ土俵に立たないように。

それが、一番安全な選択だと思ったから。

会議が終わり、席を立とうとしたその時。

「桐谷」

名前を呼ばれて、肩がびくりと揺れる。

顔を上げると、理人がまっすぐこちらを見ていた。

「ちょっと来い」

低い声に逆らえず、私はそのまま廊下に出る。

ドアが閉まった瞬間、空気が変わる。

「今度の企画、参加しないってどういうことだ」

開口一番、理人が言った。

いつもより、少しだけ鋭い声。

「ああ……」

一瞬だけ言葉に詰まりながらも、視線を逸らして答える。

「私のやりたいものじゃないから」
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