御曹司はただの同期のはずだったのに
キーボードを叩く音が、やけに大きく感じる。

画面には資料が開かれているのに、内容が頭に入ってこない。

(……集中しなきゃ)

そう思うのに、視線が勝手に逸れる。

気づけば、少し離れた席にいる理人の方を見ていた。

背筋を伸ばし、淡々と仕事をこなしている姿。

いつもと変わらない、完璧な横顔。

(なんで見てるのよ)

慌てて視線を戻す。

こんなんじゃダメ。

仕事中に、こんなことで気を取られるなんて。

誰かに気づかれたらどうするの。

自分に言い聞かせるように、キーボードに意識を戻す。

……はずなのに。また、気づく。

視線が、勝手に向いている。

理人の動きを、追っている。

(……やめてよ)

胸の奥がざわつく。

その時、女性社員の声が聞こえた。

「東條さん、今度ランチ行きませんか?」
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