御曹司はただの同期のはずだったのに
思わず、顔を上げる。

理人のデスクの前に、同じ部署の女性が立っていた。

明るい笑顔で、自然に距離を詰めている。

理人は軽く顔を上げて、いつもの調子で笑った。

「はは。どうせ奢らされるんだろ」

「えー、そんなことないですよ」

軽いやり取り。ただの、よくある会話。

――なのに。

(なんで……こんなに気になるの)

胸の奥が、ざわっと揺れる。

目が離せない。

理人が、他の誰かと話しているだけなのに。

たったそれだけなのに。

嫌だ、と思ってしまった。

(……なんで?)

こんな感情、知らない。

戸惑いと一緒に、じわじわと広がっていく。

「どうしました?玲奈さん」

隣から声をかけられて、はっとする。

「あ、いや……何でもない」

慌てて視線を戻す。

平静を装う。

でも、心臓が落ち着かない。
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