御曹司はただの同期のはずだったのに
振り返ると、理人がすぐ後ろに立っていた。

「おかえり」

自然に返されて、胸がまた温かくなる。

そのまま部屋に入る。

靴を脱いで、当たり前みたいに並ぶ距離。

――もう、特別な夜じゃない。

こうして過ごす時間が、当たり前みたいに続いている。

それが、少し怖くて。

でも。

同じくらい、離したくないと思ってしまう自分がいた。

部屋に入ると、理人は迷いなくスーツを脱いだ。

「ちょっと借りる」

そう言ってクローゼットを開け、自分のジャージを取り出す。

(……当たり前みたいに)

もう何度も繰り返している光景。

いつの間にか、この部屋に理人の服があることに違和感がなくなっていた。

着替え終わった理人がキッチンに立つ。

「やるか」

その一言で、自然と体が動いた。

野菜を切るのは私。
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