御曹司はただの同期のはずだったのに
「……そう、だね……」

返事をしながら、胸の奥がざわつく。

(……何これ)

こんな時間、知らない。

仕事でも、ただの同期でもない。

でも、恋人とも違う。

曖昧で、心地よくて、それが逆に、不安になる。

箸を持つ手が、わずかに止まる。

(これ、どういう関係なの……?)

答えは、どこにもない。

それでも。

この時間を、やめたくないと思ってしまう自分がいた。

この日も、ベッドに沈み込むと、静かな空気に包まれた。

理人の手が、そっと私の頬に触れる。

両手で包み込むように支えられて、視線が合う。

逃げ場のない距離。

そのまま、ゆっくりと唇が重なる。

前の夜とは違う。

焦るような熱じゃない。

確かめるような、やわらかい触れ方。

「……玲奈」

低く名前を呼ばれて、胸が揺れる。

「毎晩求めてしまって、ごめん」
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