御曹司はただの同期のはずだったのに
意外な言葉に、目を見開いた。

「ううん」

慌てて首を横に振る。

そんなふうに思ったことなんて、一度もない。

「つらいなら、断っていいんだぞ」

その声は、本気で私を気遣っていた。

だからこそ、戸惑う。

「大丈夫」

そう答えると、理人は少しだけ安心したように息を吐いた。

指先が、そっと肌をなぞる。

ゆっくりと距離が縮まっていく。

急がない。奪わない。

ただ、触れて、確かめる。

その穏やかな温もりに、体の奥がじんわりと熱を帯びていく。

理人の動きは、どこまでも丁寧だった。

まるで壊れ物を扱うみたいに。

(……なんで)

自然と、言葉がこぼれる。

「……なんでそんなに優しいの」

問いかけると、理人は一瞬だけ動きを止めた。

そして、すぐ近くで囁く。

「壊したくないんだ」
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