御曹司はただの同期のはずだったのに
何気ない仕草も言葉も、全部が近すぎる。

理人は何事もなかったように立ち上がり、ネクタイを手に取る。

その後ろ姿を見つめながら、胸の奥がざわつく。

――絶対、好きだ。

そう思う。

あの夜も、昨日も、今も。

こんなふうに優しくしてくるのに。

それなのに。

(……私たちって、何なの)

言葉にしないままでは、どこにも行けない気がした。

気づけば、口が開いていた。

「ねえ、私たちって……付き合ってるの?」

自分でも驚くくらい、まっすぐな問いだった。

理人の手が、一瞬だけ止まる。

けれどすぐに、何事もなかったようにネクタイを締め始めた。

「あえて言う必要ある?」
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