御曹司はただの同期のはずだったのに
コピー機の前で資料をまとめていた時だった。

少し離れたところから、聞き慣れた声がする。

「東條さん」

その名前に、手が止まった。

無意識に視線を向けると、理人の前に女性社員が立っていた。

柔らかく笑って、距離も近い。

(……また)

胸の奥がざわつく。

「今度、一緒に映画観ませんか?」

その言葉に、心臓が一瞬止まった気がした。

「映画?」

理人が聞き返す。

「はい。……二人で会いたいんです」

はっきりとした言い方。

周りに誰もいない場所を選んでいるのも分かる。

(……なんで、こんなところで)

気づけば、私は近くの壁の陰に身を寄せていた。

見てはいけないものを、見てしまったみたいに。

「ごめん……俺、決まった人いるから」

その一言に、胸が強く跳ねる。
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