御曹司はただの同期のはずだったのに
インターホンが鳴ったのは、夜も遅くなってからだった。

ドアを開けると、理人が立っている。

「ごめん、仕事長引いて。遅くなった」

少しだけ疲れた顔。

それでも、当たり前のように部屋に入ってくる。

ジャケットを脱いで、ハンガーにかけるその動きも、もう見慣れてしまった。

「どうした?寂しかったか?」

軽く笑って振り返る理人。

その余裕が、胸に引っかかる。

「……今日」

思わず声が出た。

「女の子に映画誘われてたでしょ」

理人の動きが、一瞬だけ止まる。

「ああ……誘われただけだよ。断った」

淡々とした答え。

それだけのことのはずなのに。

胸の奥が、収まらない。

「……そう」

分かってる。

断ったって、言ってるのに。

それでも。
< 55 / 150 >

この作品をシェア

pagetop