御曹司はただの同期のはずだったのに
ぽつりと、でもはっきりとした声で言う。

「説得力、ありました」

その言葉に、少しだけ胸が温かくなる。

「ありがと」

素直に返すと、公太は嬉しそうに笑った。

その様子を、少し離れた場所から見ている視線に気づく。

理人だった。

何も言わず、ただこちらを見ている。

表情は変わらない。

いつもの、無機質な顔。

――なのに。

(……何その顔)

一瞬だけ、背筋がぞくりとした。

公太は気づいていないのか、そのまま話を続ける。

「次の案件、もしよかったら一緒にやらせてもらえませんか?」

「え?」

少しだけ戸惑う。

その時、隣の同僚が小さく囁いた。

「……東條、怖い……」

「ね、今の見た?」

「めっちゃ見てるじゃん」

ひそひそ声。

けれど、その内容ははっきり伝わる。
< 63 / 150 >

この作品をシェア

pagetop