御曹司はただの同期のはずだったのに
「東條さん。企画で負けるの、桐谷さん以来じゃないですか?」

ひそひそとした声が、後ろから聞こえてくる。

小さなざわめき。

「まじかよ」「珍しいな……」「時代変わる?」

そんな言葉が、ちらほらと混じる。

私は思わず、理人の方を見た。

変わらない。

いつもと同じ、無表情。

資料を静かに閉じるだけ。

悔しさも、焦りも、何も見えない。

(……ほんと、この人は)

何を考えているのか分からない。

一方で、公太は隠すことなく喜んでいた。

「ありがとうございます!」

まっすぐな声。

その場の空気を、ぐっと引き上げる。

「いやー、勢いあるな」

「もしかして、東條を抜くんじゃないか?」

そんな声まで上がる。

冗談半分。でも、完全な冗談でもない。

結果を出しているのは、事実だから。
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