御曹司はただの同期のはずだったのに
無邪気に笑うその顔に、思わず肩の力が抜ける。

「もう、子供みたい」

「桐谷さんが姉ちゃんだからですよ」

「それまだ言う?」

くすっと笑い合う。

ただそれだけのやり取り。

軽くて、何も考えなくていい時間。

(……楽)

そう思ってしまう自分に、少しだけ驚く。

その時。

「桐谷」

低い声が落ちた。

空気が、わずかに変わる。

顔を上げると、理人が立っていた。

いつもの無表情。

でも、どこか視線が鋭い。

「午後から外回りだぞ」

「あ、うん」

慌てて返事をする。

そのやり取りを見て、公太が立ち上がった。

「俺も行きますか?」

軽い調子で言う。けれど。

「お前はついて来なくていい」

理人が、即座に返した。

その声は低くて、余計な感情を一切含んでいないはずなのに。
< 68 / 150 >

この作品をシェア

pagetop