御曹司はただの同期のはずだったのに
はっきりとした拒絶だった。

「え?」

公太が一瞬、言葉を失う。

「いや、でも――」

「別件あるだろ」

言い切る。

隙を与えない。

空気が、ぴんと張る。

(……なにこれ)

さっきまでの穏やかな空気が、嘘みたいに消えていた。

公太は少しだけ戸惑いながらも、「……分かりました」と小さく頷いた。

そのまま、私に軽く手を振る。

「じゃあまた後で」

「うん」

いつも通り返す。

でも、どこかぎこちない。

公太が去った後。

理人は何も言わず、私を一瞥する。

その視線が、妙に重い。

(……なんで)

ただ一緒に昼を食べていただけなのに。

胸の奥が、ざわつく。

理人はそのまま背を向けると、何も言わずに歩き出した。

私は少し遅れて立ち上がる。

さっきまでの笑い声が、遠くに感じた。

――同じ空間にいるはずなのに。

温度が、まるで違っていた。
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