御曹司はただの同期のはずだったのに
外回りを終えた頃には、すっかり日が落ちていた。

ビルのガラスに映る街の灯りが、にじんで見える。

「はあ……」

思わず息が漏れる。

想像以上に、きつかった。

「疲れただろう」

隣でハンドルを握る理人が、淡々と声をかけてくる。

「ああ、まあ……」

素直に頷くしかない。

もし一人だったら、途中で心が折れていたかもしれない。

(……理人がいたから)

そう思うと、少しだけ気持ちが軽くなる。

車が止まり、マンションの前に着く。

エンジンを切る音が、静かに響いた。

「今日は俺が夕食作るから」

理人がシートベルトを外しながら言う。

「玲奈は待ってればいいよ」

「う、うん……」

少しだけ驚きながら頷く。

そんなことを言われるなんて、少し前までは想像もしていなかった。

車を降りて、並んで歩く。
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