御曹司はただの同期のはずだったのに
(……何それ)

まるで、決まっているみたいな言い方。

「勝手にすれば?」

睨みつける。

強く、拒むように。

これ以上、踏み込まれたくない。

理人は、その視線を正面から受け止めたまま、離さない。

「……本気で言ってる?」

低く問われる。

その声に、わずかに揺らぐ。

「……何が」

強がって返す。

理人の手の力が、ほんの少しだけ強くなる。

逃がさないように。

「一人で帰るつもりか」

「そうだけど」

即答する。

迷いなんてない、そう見せるように。

でも。

胸の奥では、何かが引っかかっている。

理人はしばらく黙っていた。

その沈黙が、やけに重い。

やがて、小さく息を吐く。

「……いい」

そう言ったかと思うと、手を離す。

「好きにしろ」

その一言に、胸がきゅっと締めつけられる。
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