御曹司はただの同期のはずだったのに
無言のまま、階数が上がっていく。

逃げ場のない空間。

胸の奥が、ざわざわと落ち着かない。

部屋の前に着き、鍵を開ける。

「……じゃあ」

中に入ろうとした、その瞬間。

「ちょっと」

ドアを押さえられた。

理人がそのまま中に入ってくる。

「俺の寝る場所はここだ」

当然のような言い方。

「勝手に決めないでよ」

振り返って言い返す。

距離が、一気に近くなる。

空気が変わる。

さっきまでの外とは違う、逃げ場のない密度。

次の瞬間、唇を塞がれた。

「……っ」

強引すぎないのに、抗えない。

一瞬で、呼吸が乱れる。

「玲奈」

低く名前を呼ばれる。

「俺以外の男なんて見るなよ」

その言葉に、胸が強く跳ねる。

「……ただの後輩よ!」

押し返すように言う。

本当は分かっている。
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