御曹司はただの同期のはずだったのに
目を開けると、理人の顔がすぐそこにあった。

近すぎる距離。

視線が合って、一瞬だけ息が止まる。

「……おはよう」

少しだけ照れながら言うと、理人がわずかに笑った。

「おはよう、玲奈」

そのまま、髪を優しく撫でられる。

昨日の熱が、まだ体の奥に残っているみたいで、頬が熱くなる。

理人は、少しだけ距離を詰めたまま言った。

「もう手放す気ないから」

静かで、でも迷いのない声。

その言葉に、胸がきゅっと締めつけられる。

「……もうっ」

思わず顔を逸らす。

「昨日あんなに熱くしておいて」

からかうように言うと、理人はくすっと笑った。

「気持ちいいって顔してたよ」

「なっ……」

言葉に詰まる。

(ほんと、ずるい)

でも。

否定できない自分がいる。

理人は、そんな私を見て楽しそうに微笑んでいた。

その表情に、ふと気づく。
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