御曹司はただの同期のはずだったのに
(……この人、こんな顔もするんだ)

会社で見せる顔でも、余裕のある顔でもない。

どこか、柔らかくて。

少しだけ、無防備で。

それが、妙に嬉しかった。

理人が軽く体を起こす。

「今日、どこか出かけようか」

自然な提案。

まるで当たり前みたいに。

「……美術館がいい」

少し考えてから答える。

「いいな」

すぐに頷く理人。

「OK、じゃあ美術館デートだな」

“デート”という言葉に、胸が小さく跳ねる。

そのまま、後ろから抱きしめられる。

背中に、理人の体温。

逃げ場なんてない距離。

でも、不思議と心地いい。

「その後またベッドに入ってもいい?」

耳元で囁かれて、思わず息が乱れる。
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