御曹司はただの同期のはずだったのに
「……うん」

小さく頷くと、腕の力が少しだけ強くなった。

「今日、一日中、離さないから」

低く、確かめるような声。

「そのつもりで」

その言葉に、胸がじんわりと熱くなる。

離れたくない。

そう思ってしまう。

でも――

(……私たち、まだ)

恋人じゃない。

何も約束していない。

名前もついていない関係。

それなのに。

こんなにも近くて、深くて、逃げられない。

理人の腕の中で、目を閉じる。

この温もりを、失いたくないと思ってしまう自分がいる。

言葉は、まだない。

それでも。

もう、ただの同期には戻れないことだけは、はっきりと分かっていた。
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