御曹司はただの同期のはずだったのに
「何でもパーティーで東條に一目惚れしたらしいよ」

軽い興味と、少しの羨望。

まるで噂話みたいに語られている。

(……一目惚れ)

その言葉が、妙に引っかかった。

「でもさ、すごくない?」

別の社員が言う。

「これで売上は安定だな。何て言ったって、ウチの商品たくさん買ってくれるもんな」

「確かに。経営的には最高じゃん」

笑いながら交わされる会話。

そこには、誰も疑問を持っていない。

それが当たり前みたいに。

「東條はそれでいいのかな」

ふと、誰かがぽつりと呟く。

一瞬だけ、空気が止まる。

でも、すぐに別の声が返す。

「御曹司だぜ?」

軽く、当たり前みたいに。

「それくらい分かってるだろ」

その一言で、また空気が動き出す。

誰も深く考えない。

それが“普通”だから。

(……そうなんだ)
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