御曹司はただの同期のはずだったのに
私は、キーボードに手を置いたまま、画面を見つめる。

文字が、全然頭に入ってこない。

理人の顔が浮かぶ。

さっきの社長室。

あの女性の隣に座る理人。

あまりにも、違和感がなかった。

(……やっぱり)

胸の奥が、じわっと重くなる。

(そういう世界の人なんだ)

分かっていたはずなのに。

ずっと前から。

彼は御曹司で、いずれ会社を継ぐ人で。

自分とは違う場所に立っている人。

それなのに。

一緒に笑って、同じベッドで眠って、当たり前みたいに「一緒にいる」と言ってくるから。

――勘違いしそうになる。

(……ダメだ)

それ以上考えないように、視線を落とす。

仕事に集中しなきゃ。

そう思うのに、指が動かない。

周りの声が、まだ耳に残っている。

「お嬢様か……」

「東條にぴったりじゃん」

「絵になるよな」
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