御曹司はただの同期のはずだったのに
「東條さん、婚約するんでしょうか」

唐突な問い。

箸が止まる。

「……するんじゃない?」

できるだけ平静を装って答える。

「相手は申し分ないもの」

頭では、そう分かっている。

理人の立場も、会社の事情も。

全部、理解しているつもりだった。

「桐谷さんは、それでいいんですか」

その一言に、胸が揺れる。

視線を落とす。

弁当の中身が、急に遠く感じる。

「いいもなにも」

少しだけ声を強くする。

「私はただの同期だし」

そう。それだけの関係。

それ以上でも、それ以下でもない。

そう言い聞かせるように。

公太はしばらく何も言わなかった。

その沈黙が、やけに長く感じる。

やがて、小さく息を吐く音がした。

「……桐谷さん」

名前を呼ばれて、顔を上げる。

まっすぐな視線。

逃げ場がない。
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