御曹司はただの同期のはずだったのに
「俺なら」

一歩も引かない声。

「ちゃんと隣に立てます」

その言葉に、息が止まる。

(……なに、それ)

あまりにも、真っ直ぐで。

あまりにも、はっきりしていて。

一瞬、何も考えられなくなる。

「俺、東條さんみたいに全部持ってるわけじゃないですけど」

少しだけ照れたように笑う。

でも、目は真剣だった。

「でも、桐谷さんのこと、ちゃんと見てます」

その言葉が、静かに胸に落ちる。

見られている。

必要とされている。

そう感じてしまう。

(……ダメ)

こんなの、考えちゃいけない。

「……ありがとう」

やっとの思いで、それだけ言う。

それ以上は、何も言えなかった。

言ったら、本当に揺れてしまいそうで。

公太はそれ以上踏み込まず、ただ軽く笑った。

「焦らなくていいです」

その一言が、妙に優しかった。
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