消せない痕 ~甘く危うく、既婚者上司と崩れる理性~
── 同時刻 ──
女性事務員のスマホに、通知が届いた。
《お久しぶりね。
最近、主人の帰りが遅くて心配で……。
でも主人ったら、会社のことは
何も話してくれなくて……。
主人は社内で、どんな感じかしら?》
画面を見つめた彼女は、
わずかに眉を寄せる。
「真美さん……?
急に、どうしたんだろう」
いくら黒崎部長が何も話さないからといって、
私にまで連絡してくるなんて……。
それほど心配しているのだろうか。
しばらく迷ったあと、
彼女は失礼のないよう、言葉を選びながら返信をした。
《最近の黒崎部長でしたら、
新しいプロジェクトが始まって、忙しそうですね。
部下の方と、ふたりで動いていらして、
プロジェクト自体は順調そうですよ。
部署も、特に変わった様子はありません》
……ふたり。
その文字を目にした瞬間、
全身から、
さっと体温が奪われたような感覚に襲われた。
《その部下の方は、男性の方かしら?》
《いえ、女性の方です。
とても優秀な方のようですよ》
女性と……ふたり。
指先が、冷たくなっていくのがわかる。
息を整えるようにして、
もう一度、画面に文字を打ち込んだ。
《そう、ありがとう。
ちなみに、その女性の方は、
私の知っている方かしら?》
ほどなくして、通知が届く。
《いいえ。
転勤してきたばかりの方なので、
真美さんはご存知ないと思います。
白石さんという方なんですけど……》
白石という女性と、
ふたりでプロジェクトを……。
胸の奥で、
何かがわずかに軋んだ。
「……仕事よ」
言い聞かせるように、小さく呟く。
――白石。
その名前を、
真美は静かに胸の奥へしまい込んだ。
女性事務員のスマホに、通知が届いた。
《お久しぶりね。
最近、主人の帰りが遅くて心配で……。
でも主人ったら、会社のことは
何も話してくれなくて……。
主人は社内で、どんな感じかしら?》
画面を見つめた彼女は、
わずかに眉を寄せる。
「真美さん……?
急に、どうしたんだろう」
いくら黒崎部長が何も話さないからといって、
私にまで連絡してくるなんて……。
それほど心配しているのだろうか。
しばらく迷ったあと、
彼女は失礼のないよう、言葉を選びながら返信をした。
《最近の黒崎部長でしたら、
新しいプロジェクトが始まって、忙しそうですね。
部下の方と、ふたりで動いていらして、
プロジェクト自体は順調そうですよ。
部署も、特に変わった様子はありません》
……ふたり。
その文字を目にした瞬間、
全身から、
さっと体温が奪われたような感覚に襲われた。
《その部下の方は、男性の方かしら?》
《いえ、女性の方です。
とても優秀な方のようですよ》
女性と……ふたり。
指先が、冷たくなっていくのがわかる。
息を整えるようにして、
もう一度、画面に文字を打ち込んだ。
《そう、ありがとう。
ちなみに、その女性の方は、
私の知っている方かしら?》
ほどなくして、通知が届く。
《いいえ。
転勤してきたばかりの方なので、
真美さんはご存知ないと思います。
白石さんという方なんですけど……》
白石という女性と、
ふたりでプロジェクトを……。
胸の奥で、
何かがわずかに軋んだ。
「……仕事よ」
言い聞かせるように、小さく呟く。
――白石。
その名前を、
真美は静かに胸の奥へしまい込んだ。